僧侶的  いま・ここ

仏教とは、仏の教え、つまり、ものの見方の事                 【禁】複製・転載

修業と修行

業を修めると書いて、修業。
学芸を習い修めるのが、修業。
一事を究めようと、一事に秀でようと、修練を重ねる。
和菓子職人になるための修業、小説家になるための文章修業。
習得がすめば、その修業は卒業できる。


行を修めると書いて、修行。
仏道や武道を修めるのが、修行。
一つ一つの行いを丁寧に修めていくのが、修行。
お寺で坐禅修行、技を極めたものが道場を巡って武者修行。
心掛け次第で、どこまでも深めていける。



鈴木正三が、弟子の恵中に示した。「修行とは、我を尽くす事なり」


「我を尽くす」とは?
自分の為に、懸命に励む事のように思うけど・・・
頑張っている俺には、褒められたい俺がいる。
努力している私には、認めて欲しい私がいる。
頑張りや努力のそばに、他人と比べる自分が顔を出す。
隣りを横目で覗く事でしか、自分を確認できない。




止むにやまれぬ思いから、禅門に飛び込んだあの日、お師匠様からこんな教えをいただいた。
「いま・ここ・一所懸命」 「他人と自分を比較する事をやめなさい」と。




慙愧に耐えないけれども・・・
我を尽くすとは、自分という塊に拘泥しない事。




我を尽くす時、実は、我ならざるものはない。




いま・ここに、全てがあった。






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法話


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他己

夕方、かったるそうにレジを打つ30前の店員。
小銭を取り出すのに手間取っている老婆に、小さく吐き捨てた。
「うぜぇ、早くしろよ」
1時間なんぼの仕事にさえ、プライドが持てないのか?
こんな店員を雇い、使いまわして捨てるのも、これもまた、雇われの店長。




「母子家庭になったおかげで、市営住宅にも入れたし、手当ても結構、貰えるの」と、カウンターで、寿司をほおばりながら語る女。
「5年前に離婚届けをだしてさ、でも、実は、・・・ずっと、旦那と暮らしてるのよ、凄いでしょ。だって、こんな時代、真面目にやったら、貯金もできないわよ。
子供?いるわ。小学生と中学生の二人の息子」

利権目当ての偽装離婚。
その親の背中は、どんなふうに、子供に映るのだろうか?
くすねた金じゃあ、うまい酒は飲めやしない。




大きなバイクを買っても、任意保険に入らない理由は、「金がないから」
高級車を転がしても、娘の保育料を払わぬ親。
ブランド物のバッグを持つために、「援助」を求める女。


そりゃあ、いい物はいい。でも、本当はどうなのか?
消費による自己実現。晦まされた人の価値。
自由とはお金の事かい?




道元禅師は、他にも己という字をつけ、他己<たこ>と現した。
自分と他人ではなく、自己と他己。
自分と他人の二つではなく、己ひとつ。
ふたつの対立の世界ではなく、へだてのないひとつの世界。
己ひとつの世界だよ、と。


自分の物は俺の物、他人の物も俺の物とするのは、蛸野郎の論理。


他己、それは、他もまた己にほかならぬ事。
自己とは、自分に現れた己であり、他己とは、他に現れた己の事。
つまり、すべてが己。



己ひとつが解れば、老婆が己の姿と重なるだろう。

己ひとつが解れば、世間を騙す事は、己自身を騙す事に気付くだろう。

己ひとつが解れば、この命もその金も、預かり物だと知るだろう。




己ひとつの世界だからこそ・・・愛おしいのだ。










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法話


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誓願を生きる

先日、5歳になる姪にこんな事を質問されました。
「世界で一番、偉い人ってだれかな?」と。

どうでしょうか?
皆さんは、この世で、一番偉い人って誰だと思いますか?

政治家や弁護士、そして、お医者さん。そんな風に、ステータスとされる職業に就いている方を思い浮かべるかもしれません。
けれど、その職業や地位が偉いのか?その人が偉いのか?

また、そんな地位や肩書きよりも、もっと端的に、預金通帳の残高が多い人、或いは、財をなした人が偉いのだと、答える方もいるでしょう。
お金のあるなしだけで、人生の勝ち負けが決まってしまう、そんな時代でもあります。
お金は大切だけれども、お金が偉いのか、その人が偉いのか・・

私は、姪に逆に問いかけました。
「えりちゃんなら、誰だと思う?」
パパやママと答えるかなと思いましたが・・・
もし、法慧ちゃんと答えるなら、おもちゃでも買ってあげようと思っていましたが、その答えは「アンパンマン」でした。

予想外の答えに驚き、熱があるのかと彼女の額に手をやりながら、
「なんで、アンパンマンなの?」と尋ねてみました。

「だってね、アンパンマンって、すごくやさしいでしょ。
悪い事するバイキンマンをやっつけて、とっても強いし。
それに、おなかのすいた人には、自分の顔を食べさせちゃうんだよ。
だから、とっても偉いなって思うの」

と、そう語る彼女は真剣で、熱もありませんでした。

私は、アンパンマンを子供の漫画としか思っていませんでしたが、彼女なりに5年間生きてきて、この世で一番偉いのはアンパンマン、と答えるのには、何か根拠があるのだろうと調べてみることにしました。

アンパンマンの作者、やなせたかしさんは、皆さんご存じの歌『手のひらを太陽に』の作詞者でもあります。
やなせさんは、ご自身の生い立ちや戦争の体験をもとに、アンパンマンに、本当の正義とは何か、という思いをぶつけていたのだと知りました。

我が身を捨てる、我が身を献じる心なくして正義は行われないという思いから、アンパンで出来た顔が、欠けたり濡れたりするとその力を失うという弱点がありながらも、溺れそうな人を見れば、ためらわずに水に飛び込み、ひもじい思いをしている人をみれば、アンパンマンが自らの顔をちぎり食べさせる事によって、人を救うという姿を描いています。

アンパンマンは、再生可能な顔を持つから、そんな事ができるのだ、と見る人もいるでしょう。現実にはありえないよ、と言う人もいるでしょう。
しかし、その道を歩むと決めた者にとっては、いくら挫折したとしても、たとえ、志半ばで倒れたとしても、やはり、それを貫かないではいられないと思うのです。

やなせさんは、この作品を通して、何のために生まれて、何のために生きるのかを問い続けています。あなたは、何のために生まれて、何のために生きるのか?

彼女がアンパンマンを偉いと感じたのも、やなせさんの願いに響いたからでしょう。

お釈迦さまは、このようにおっしゃっています。
「人は、地位や生まれ、姿によって、偉いのではない。
その人の行いによって、賤しい人ともなれば、偉い人ともなる。」

その人の行いによって、決まる。

では、その行いとは、なんでしょうか?
やなせさんの言葉を借りれば、何のために生まれて、何のために生きるのかの答えこそが、行いであります。

そして、行いとは夢であり、誓いであり、願いである。
すなわち、人生とは、夢を生きることであり、誓願を生きることだと言えます。

地位や名誉や、お金があるかないか、は結果です。
結果のみを見ることより、むしろ、今どのような夢や誓願を抱いて生きているのかを、問わなければならない。

今年の夏、ある経営コンサルタントの方とお会いするご縁がありました。
名刺を交換した直後、いきなり、彼がこんな事をいいました。

「この鞄の中に3億円があります。
これをあなたに差し上げると申し出たら、どのようにお使いになりますか?」

私は、「坐禅堂を建てます」と、即答いたしました。

私は、二十歳の頃、大切な方との別れがありました。
それが契機になり、禅の世界にひかれていきました。
はじめて訪れたお寺に、坐禅堂がありました。
そのお寺の方丈様は、共に、坐る事を許してくださいました。

結果、そのご縁で頭を剃る事にもなりました。
あの頃の私と同じ人のためにも、坐禅堂を作り、共に坐る場を作りたいと願っております。

結局、3億円はいただきませんでしたが、彼は笑いながらいいました。

「この質問を経営者の方々にしますが、多くの方が貯金をする、と答えます。
貯金をして、しばらく使い道を考えます、と。
慎重になるのは結構ですが、でもそれはちょっと違うな、と思うのです。
今、本当に夢を生きていれば、正しい願いを生きていれば、答えられるはずです」

夢や誓願を生きるとき、仏教徒として忘れてはならない誓いがあります。

一切の悪いことは誓っていたしません。
一切の良いことを誓っていたします。
すべての人のため、社会に尽くすことを誓います。

この誓願の原点は、すなわち、南無帰依仏であります。
仏に帰依すると信じたときに、我が仏である、と気づいた時、自ずとこの誓願が体に表れてくる。
人のため、世のために、この身を尽くさないでおられない。

それは、叱られたくないから、捕まりたくないから悪いことをしない、というものではありません。また、褒められたから、他人に良く思われたいからいいことをする、のでもありません。

泥棒は、盗めば泥棒です。
警察に捕まらなくとも、検察に起訴されなくても、裁判で実刑を受けなくても、盗めばそれは泥棒です。そんな世間の取り決めややりとりではない。

でも、難しくはない。
アンパンマンにも出来るし、5歳の女の子にも、その尊さは理解する事ができる。

だからこそ、共に、南無帰依佛と手をあわせ、この誓願を持って、本当の偉い人となる歩みをいたしましょう。

一切の悪いことは誓っていたしません。
一切の良いことを誓っていたします。
すべての人のため、社会に尽くすことを誓います。



ご清聴ありがとうございました。







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法話


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