僧侶的  いま・ここ

仏教とは、仏の教え、つまり、ものの見方の事                 【禁】複製・転載

境涯

老病覚来不能寝   老病覚め来たって寝る能わず
四壁沈々夜正深   四壁沈々として夜正に深し
燈無焔爐無炭     燈に焔無く爐に炭無し
只有凄凉枕積衾   只凄凉枕衾に積る有り
不知何以慰我心   知らず何を以て我が心を慰めん
暗曳烏藤歩庭陰   暗に烏藤を曳いて庭陰を歩す
衆星羅列禿樹花   衆星羅列す禿樹の花
遠渓流落無弦琴   遠渓流れ落つ無弦の琴。
此夜此情聊自得   此の夜此の情 聊か自ら得たり
他時異日向誰吟   他時異日誰れに向かつて吟ぜん
          


老いさらばえて、なかなか眠りにつけない
闇が暗くのしかかり、夜のとばりが深い
燈の明かりはなく、爐に炭の火も残ってない
名状しがたい寂しさの塊が、私を捉えてはなさない
どうしたら、この心を慰めることができるだろうか

暗闇の中、杖に身を任せ庭に出てみる
満点の星が光を放ち、木々に花を咲かせているようだ
谷川の柔らかな音は、まるで琴を奏でているようだ
「嗚呼、生きていてよかった」と、跪き手をあわせてた
この事を共有してくれる友はいるだろうか





同じ言語を使用し、同じものを見、同じことを体験したとしても、
その境涯によって、その意味するところは異なる。
星のきらめきや谷川のせせらぎを、己の命とする人もいる。





楽しい時やハッピーな時は、悲しい時や辛い時よりは、居心地はいい。
そう、居心地はね。




朝、新聞をめくりながらインスタントのコーヒーをすするのが、いつもの朝食。
妻は起きてこず、やさぐれ娘は帰ってこない。
片道2時間かけて、職場へと向かう。

人の使い方をしらない上司、同じ人間とは思えない部下。
取引先からはクレームの電話。
頭を下げ、怒鳴り、媚びる。
陰で何と言われているくらい、俺だって知ってるさ。
雲行きは変わることなく、「定年まで、あと2年」と自分に言いきかせる。




そんな気だるい午後であっても、世界中が敵に思えても、死んでしまいたいと思う状況にあっても、
・・・しかし、いのちの風光は輝いているのだ。





楽しい時やハッピーな時は、悲しい時や辛い時よりは、居心地はいい。
・・・でも、それだけのこと。
幸せは居心地の良さではない。






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禅語・仏教語・言の葉


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平気さ

春のお彼岸を迎える準備をしている頃の事でした。

舌に違和感があり、耳鼻咽喉科に行きました。

その先生は写真を指差しながら、「この腫瘍、できた場所と色がとても悪いですね」と言いました。
しばしの沈黙のあと、「舌癌の可能性が高いと思います」と。

そして、急に優しげな声色で「大きな病院で精密検査をしてくださいね。今、紹介状を書きますから」と、付け加えました。


舌癌か・・・あと、どのくらい生きられるのだろうか?・・・

そんな事を、癌がわが身にある可能性を告げられただけで思ってしまいました。
癌という言葉が死を意味するものでなくなりつつある現代にありながらも、やはり、癌という言葉を、死に置き換えて考えてしまう愚かな自分がいました。


じゃあ、癌にならなければ、死なないのか?
そう、癌でなくとも、その時がくれば、この命はお返ししなければなりません。


拝借申す 四大五蘊 お返し申す 今月今日   
                            一休


蓮如上人『白骨の御文章』に曰く
「されば、朝には紅顔ありて、夕には白骨となれる身なり」

学校に行きたくないと泣いた子を叩き出して、事故に遭うこともある。
浮気が原因の夫婦喧嘩の仲直りをする事もなく、夫が仕事先で倒れる事もある。
憎み、妬み、恨み、そねむ心が己が徳をすり減らして、穴ふたつとなる事もある。



禅は、生と死を分けて考えない、つまり生死<しょうじ>として受け止めます。
「生とは何か・死とは何か」ではなく、「いまとはいつか・こことはどこか」であります。


余ハ今迄禅宗ノ所謂悟リトイフ事ヲ誤解シテ居タ 
悟リトイフ事ハ如何ナル場合ニモ平気デ死ヌル事カト思ッテイタノハ間違イデ 
悟リトイフ事ハ如何ナル場合ニモ平気デ生キテ居ル事デアッタ      
                   正岡子規『病牀六尺』


子規は、わずか35歳で亡くなりました。
不肖ながら、私は今年39歳になります。嗚呼、勉旃、勉旃。


今回の件で、随分と電話やメールをいただきました。ありがとうございます。
親切なお気持ちを頂きながら、いまだ、返信しておりません。どうぞ、お赦しください。





先日、検査を受けてまいりました。

・・・まぁ、平気です。


そう、平気さ。






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もう少し

更新が滞ってしまい、ご心配をおかけしております。
おかげさまで、元気にしております。


しかしながら、もう少しお待ちください。
あと少し、猶予をください。



今、癌という言葉に、全てを奪い取る勢いがあるという事を学んでおります。





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